甘くてこまる



郁の耳もとでそっと囁くと、ぱちっと目が開いた。

耳の近くで名前を呼ぶのは、最終手段。

今まで色々試してきたけれど、郁を起こすにはこれがいちばん効果的なの。



眠たそうなアーモンドアイがわたしをじっと見つめて。




「……せーら」




おもむろに伸びてきた指。

油断した隙に、しゅるっとリボンを解かれる。



気づいたときには、蝶々結びは跡形もなくなくなっていた。




「な……っ、なんで解くのっ!?」

「目の前でゆらゆらしてたから」

「もう〜〜っ、せっかく綺麗に結べたのにっ、いっぱい練習してようやくできたのにっ!」

「ふーん。それが高校の制服ね」




むう、と恨めしく郁をにらむ。

けれど、郁はわたしの文句なんか聞いちゃいない。




「スカート、短すぎない?」



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