甘くてこまる
「わわっ」
カシャンッ。
机の端に置いていたその “なにか” は床に落ちてしまって、派手な衝撃音を立てる。
わたしは慌てて、しゃがんで拾い上げた。
「よかった、無事で……」
ほっと、胸をなでおろした。
それなりの高さから落としてしまったわりに、へこんだり傷がついてしまった様子はない。
落としてしまった “なにか” の正体は、ブリキでできたまあるい缶。
顔より少し大きいくらいのサイズで、蓋に描かれた立体的なお花のもようが可愛いの。
もともとは、わたしがたしか小学1年生の頃に、パパが会社でもらってきたクッキーの缶。
あんまり可愛かったから、パパにおねだりしてゆずってもらったんだっけ。
それ以来、これはわたしの “宝箱” なんだ。
お宝────わたしにとって大切な宝物を、しまっておくための箱。
……なんだけど。
そういえば、最近はこの箱、開けてなかったなぁ。
「なに、入れてたんだっけ……」