甘くてこまる
扉からひょこっと現れたのは。
「え、紘くん……っ?」
紘くんはつかつかと教室に入ってきて、わたしとうみちゃんの間に陣取る。
それから伏し目がちにちらりと窓の方に視線を送る。
紘くんの視線を受けて、なぜかそこにいた男の子たちは一瞬表情を引きつらせて、蜘蛛の子を散らすようにどこかに行ってしまった。
わたしを呼んだはずの男の子も、いなくなっていて。
あれ……?
よかったのかな、と不思議に思うわたしの向かいでうみちゃんがぼそりと呟く。
「出たよセコム2号」
うみちゃんのじとっとした視線を受けても、紘くんは動じない。
ていうか2号?
2号ってことは、どこかに1号が……。
困惑するわたしを見下ろして、紘くんは目尻を下げる。
「紘くん、わたしに用事?」
「……いや、うん」