甘くてこまる


「ええ、そうかなぁ。この丈がかわいいんだよ」

「……ふーん?」



納得いかなさそうにスカートから視線を上げた郁は、ツインテールの束をするっと持ち上げて、それからわたしの唇をじーっと見つめて。



「だめ」

「……ほぇ? なにが?」

「リップ。せーらには早いよ」




そう言うなり、郁が手の甲でわたしの唇をごしごし拭ってしまった。

郁の肌に乗り移ったピンクに、目を丸くする。




「ひ、ひど、なにするの……っ?! リップ落ちちゃ……」

「落としてあげてんの」

「うぅ……。かわいくなかった?」




芸能界にいるから、目が肥えている。

そんな郁にはそうとうひどく見えたのかもしれない。

しゅんとすると、郁は両手でわたしの頬を包み込んで。




「かわいいから、だめ」




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