甘くてこまる
慌てて両手で郁の目を覆い隠した。
「みっ、見たの!?」
「いや、そこに普通に置いてあるじゃん。で、咲良さんに聞いたら、せーらのって言うから」
咲良さん、はわたしのママのことだ。
あああ、と頭を抱える。
ローテーブルに積んである雑誌やその切り抜きは、たしかにわたしのもの。
この前部屋を片づけたときに、また今度収納場所を考えようと思って、ここに持ってきていたのがよくなかった。
そうだよ。
これは、ぜんぶ、郁が載っているもの。
ドラマの宣伝だったり、ロングインタビューだったり、ときにグラビアだったり。
秘密にしていたけれど、郁がデビューしてから今までの分、ぜんぶ、ほんとうにちょこっとしか載っていないものも含めて一つ残らずぜんぶ、集めている。
「応援、してるんだもん。ちょっとでも売り上げに貢献して、郁の力になれたらいいなぁって、思って」