甘くてこまる
「は……?」
「明日から郁を起こしに来るの、やめる。それだけじゃなくて、今までみたいに話したり、一緒にいたり……そういうの、もうやめるの。郁と、ちゃんと距離を置く……!」
そろりと瞼を上げると、郁はあんぐり口を開けたまま固まっていた。
金縛りにあったみたいに、カチコチに。
ふと、そんな郁の背後にある掛け時計が視界に入って、ハッとする。
「わたし、もう行かなきゃっ」
今日は入学式。
初日から遅刻はよくない。
「……っ、ちょ、せーら」
「紘くんも待ってるし、この話の続きは帰ってからねっ! 郁は今日も撮影だよね、頑張ってねっ」