甘くてこまる

「郁……!?」




ものすごく虫の居所が悪そうな顔をした郁がそこにいた。

アウェーな空間に、知らないうちに強ばっていた肩の力がすうっと抜けていくのがわかる。




「あれ、ふたり知り合いなん?」




郁に容赦なくゲシゲシと容赦なく脛を蹴られた余韻で、眉間にしわを寄せながら、相馬さんが郁とわたしを見比べる。





「もしや、矢花のカノジョ――――」

「ちっ、違いますっ!」





あらぬ誤解を生みそうになり、慌てて首を横にふった。



ちゃんと否定しておかないと。

インフルエンサーとして活動している相馬さんはきっと顔が広いから、勘違いがそのまま広まって、郁のスキャンダルに繋がったら、困る。




「ほんまに? 怪しいなあ」

「ほんとです! 神に誓ってですっ!」


「そうなん? 矢花」

「まあ、うん。カノジョじゃないよ。……“まだ”」




なぜか、むすっと唇をとがらせている郁。




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