甘くてこまる
郁の返答に「なるほどなあ」と、相馬さんはにやにやと悪い笑みを浮かべた。
「わざわざ牽制せんでも、オレはせーらちゃんのこと狙ったりせんから安心しい」
今んとこホンキで恋愛する気ないしなあ、と付け加えた相馬さんの脛に郁が再度鋭い蹴りを入れる。
イッ、と短い悲鳴を上げた相馬さんは、郁をにらんで。
「ちょお、今度はなんやねん」
「……気安く呼ぶな」
「ん?」
「せーら、って」
郁がそう言うのを聞くなり、相馬さんはケラケラと腰を折って笑い始めた。堪えきれない、といった感じで。