甘くてこまる
「なんや、矢花も人間なんやなあ。いっつも、愛想笑いしかせん不気味なやつやと思っとったけど、かわいい一面もあるやんか」
ひとしきり笑った相馬さんは目元ににじんだ涙を、自らの指でぬぐいながら、わたしを見つめる。
「面倒くさいやつに好かれてんなあ、せーらちゃ――――えーっと、キミ、苗字は?」
「え、と、笹本です」
「笹本ちゃんね、りょーかい」
改めてよろしくなー、と伸びてきた相馬さんの手のひら。
握手に応じようと、伸ばした手は。
「っ、あの、郁?」
なぜか郁の手に絡めとられる。
振りほどこうとしたけれど、それも許されず。
そのまま手が繋がった状態で、郁が首を傾げた。
「ていうか、なんでせーらがここにいんの」