甘くてこまる


𓐍
𓏸



目がくらむほど煌々と焚かれたライト。

うっかり肘が当たって倒してしまったら、と想像するだけでゾッとするような機材の数々。




そこにあるもの全てが非日常で、きょろきょろと視線をさまよわせるわたしは、やっぱり浮いていたみたい。


スタジオ入りしてすぐにウエストポーチを提げたスタッフさんに声をかけられた。




「あのう……、スタジオ、間違えてませんか?」

「う、えっと」




言葉に詰まるわたしの後ろからにょきっと首を出したのは、相馬さん。




「いーや、この子、オレの連れやから。よろしくしたって」


「……梓くん。またですか? いっつも女の子、勝手に連れ込んで」

「んー、説教は勘弁」



まあ、いつものことですから、もう今さら咎めませんけど、とスタッフさんはわたしがスタジオにいることを認めてくれる。


と、ここまでの流れを踏まえると。




「常習犯、ですか?」




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