甘くてこまる
「ってことで、俺、今日フリーだからさ」
「……? うん、そうだね?」
郁の真意が掴めず、たまの休みなのだから、もうちょっとゆっくり眠っていてもよかったんじゃないかな……なんて、まだ起きがけのぼんやりした頭で考えていると。
「俺の1日、せーらにあげる」
「へっ!?」
「せーらの好きなとこ、行こ」
好きなとこ……お出かけする、ってこと? 一緒に?
そんなわけないか。
だって、郁は芸能人。一緒に出かけているところなんて、誰かに目撃されたら大変なことになる。
きっと、聞き間違いのはず。
「そういや、昨日、カメラの練習するとか言ってなかった? それ、付き合うけど」
「ま、待って……!」
「うん?」
「あの。お出かけするってこと……? ふたりで、これから……」