甘くてこまる


「うん。って、そこから?」



今の話の流れでわかってなかったのかよ、って郁はびっくりしたような顔をしたけれど。

びっくりするのはわたしの方だ。




何考えてるの?
ほんとうに、芸能人っていう自覚あるの?


バレたら、大変なことになるんだよ。




それなのに、冷や汗をかいているのはわたしだけ。
郁はまったく気にしていない涼しい顔をしている。





「カメラの練習したいんでしょ」

「それは、そう、なんだけど」




結局、昨日は、郁の荷物を届けるためにスタジオに行って、それで1日つぶれてしまったから。




「じゃあ、決まり」

「ええ!?」




勝手すぎるよ。

わたしの意見も聞かないで。


じゃあ、準備してくるって早速くるりと背中を向けようとした郁をあわてて、引き止める。袖を掴んで。




「せーら、どしたの」



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