夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
「僕は君が泣いていたら、何故泣いていたのかを聞き、今後どうしていくのかを共に考えたいと思っている。そうして、その後にあれからどうだったかと語れたら良いと思うのだよ」
「……ローレンス兄様」
「僕にとっての家族とは、港のようなものだからね。心の拠り所であり、何があろうと支え合う存在でありたいのだよ」
ローレンスはにっこりと微笑みクローディアの頭を撫でると、前を向いて歩き出した。
堂々と己が選んだ道を突き進んでいくローレンスは、いつだって格好よかった。
他人が何と言おうと信念を貫く強さも、最後にはいつも家族を選んでしまう弱さも。
彼が人に好かれ、その周りではいつも笑顔が絶えない理由をクローディアは分かった気がした。
「兄たちもきっとそう思っているはずだ。僕よりも優しい人たちなのだからね」
「…ローレンス兄様も優しいわ」
ローレンスは足を止めて振り返る。優しいと言われたのが心外だったのか、驚いたように目を見張ったが、すぐに笑みを浮かべた。
「それは嬉しい言葉だ」
クローディアは微笑み返した。
こんなふうに、ローレンスはいつも足を止めて振り返ってくれる人だった。目的地で先に待つのがルヴェルグで、歩調を合わせて一緒に歩いてくれるのがエレノスならば、ローレンスは少し先を歩きながら後ろを振り返る人だ。
幼き頃から変わらないその優しさに、深い愛情に触れたクローディアは、ローレンスが愛する庭園へと視線を移す。
アルメリアはもう散っていたが、色とりどりの薔薇が蕾をつけていた。