夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
それから数日後、フェルナンドを招いた晩餐会が催された。クローディアは何か理由をつけて参加を取りやめたかったが、全員出席するようにと皇帝からの命が下った為、渋々ドレスを選んだ。
「──ディアってば、フェルナンド殿下がいらっしゃるのにそれは地味すぎない?」
壁と同じ薄い黄色のドレスに身を包んだクローディアは、迎えに来てくれたベルンハルトに早速ぶつくさと言われていた。これでいいのだと訴えるが、それは皇女としてどうなのかとベルンハルトはぼやく。
「ベルったら、今日の主役は王太子殿下なのよ? 私が着飾る理由はないわ」
「確かに主役はフェルナンド様だけど、ディアは帝国の唯一の皇女なんだから、もっと着飾って殿下の目に焼き付けてもらわないと!」
「むしろ私のことなんて…」
視界に入れても記憶に残らない人間となりたいと願うクローディアは、そっとため息をついた。フェルナンドのために着飾るのは嫌なのだ。
「──二人とも、何を喧嘩しているんだい?」
支度が遅いことを心配してきたのか、たまたま立ち寄ったのかは分からないが、エレノスが不思議そうな顔をしながら現れた。
「聞いてくださいよ、エレノス閣下。ディアってばせっかくの晩餐会なのに、地味なんです」
見てくださいよそのドレス、とベルンハルトは嘘泣きをする。
「…確かにシンプルなドレスだが、ディアは何を着ても可愛いよ?」
「可愛いですけど、そうじゃないんです! 閣下なら分かってくださると思ってたのにー!」
クローディアのこととなると甘いエレノスにベルンハルトは肩を落とした。