夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
フェルナンドはくつくつと笑うと、クローディアを追い詰めるように足を進める。それはまるで獲物を追い詰めた熊のようで、その距離が縮まるほどクローディアの胸の鼓動は速度を増していった。
「……何を、仰っているのですか…?」
やっとの思いで出した声を、フェルナンドは鼻で笑う。
「知らぬふりはいらん。お前が私と同じなのは分かっている」
──同じ? フェルナンドと?
「こうして私のことを避けようとしているのが何よりの証拠だ」
何が同じなのだろう。クローディアのその問いは、フェルナンドに触れられた瞬間に喉元で消えた。
青い瞳がクローディアを捕らえる。未だにこの目で見たことのない海の色をしているというそれは、不気味で寒々としている。
フェルナンドはニィっと口の端を上げ、クローディアの細い手首を掴む手に力を強めた。
「久しぶりだな、クローディア。私のいない世界は楽しかったか?」
「……まさかっ…」
「そのまさか、だ。私も時を遡っている」
クローディアは目を大きく見開いた。自分の他にもそんな人間がいたことに驚いていたが、まさかフェルナンドだとは。