夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
そんな──生まれ持ったものに理由をつけて蔑むのはオルヴィシアラだけだ。帝国ならば例え黒だろうと赤だろうと、どんなに変わった色を持って生まれようと、生まれてきてくれてありがとうと優しく笑いかけるだろう。
オルヴィシアラで生まれてしまったがために、不遇な目に遭ってきた人はリアンの他にもいたはずだ。
(…オルヴィシアラでなかったのなら)
ふと、クローディアの頭にあることが過ぎる。
リアンが王国の王子である限り、その夢が叶わないのなら、王国の王子ではない別の立場の人間になればいいのではないだろうか。
例えるならば、王国の王子よりも上の──帝国の皇女の夫に。そうすればリアンは大陸一の国力を持つ国の皇族の一員となり、その夢を叶えることができるだろう。
そしてクローディアは、フェルナンドが言っていた悍ましい“運命”とやらに抗うことができる。
(…名案かもしれない、これは)
フェルナンドと結ばれるのが運命ならば、そうなる前に別の人間と結婚してしまえばいい。ただしそれは誰でもいいというわけではなく、互いに利益があり、尚且つ皇帝を納得させられる理由があってこそだ。
意を決したクローディアはリアンの目を真っ直ぐに見つめる。
「──リアン。あなたの夢を叶える手伝いがしたいわ」
「どういうこと?」
「代わりに、私の力にもなってもらいたいの」