夜明けの花

「──クローディアっ!!」

「ベルっ…!」

家族同然である幼馴染・ベルンハルト公子にようやく会えたクローディアは、花開くように微笑むと手を差し出す。それを取った公子は手の甲にキスを落とすと、にっこりと微笑み返した。

絶世の美女と謳われている皇女と公爵家の次期当主。見目麗しい二人が並んでいるのを見た人々は、数年後のオルシェ公爵夫妻だと想像するに違いない。

皇族を除いた帝国内の独身男性では、ベルンハルト公子の身分が一番高い。クローディアの縁談相手としてまず名前が挙がることは誰もが分かることだった。

「久しぶりだね、ディア。元気だった?」

「ええ、元気よ。ベルは?」

「僕は相変わらずだよ。麦畑だらけの領地で勉強するのに飽きてきたから、帝都に滞在させてもらえるよう陛下にお願いしようかなって思ってたところ」

「まあ、それは素敵だわ。ベルにたくさん会えるわね!」

「僕だけじゃなくて、母様にも会ってあげてほしいな。ディアにとても会いたがっていたから」

ベルの母君──オルシェ公爵夫人は、クローディアにとって母親のような存在だった。

自分が生まれた日に母を亡くしたクローディアは、公爵夫人とエレノスに育てられた。

当時公爵夫人が皇女の乳母を引き受けた時は、ベルンハルトはまだ一歳だったが、母親を皇女に取られたことに泣いたりはせず、妹ができたかのように皇女とよく一緒に遊んでいたそうだ。その為二人は兄妹のように仲が良い。

二人の間柄を知っているエレノスら兄たちは、ベルンハルトならば皇女の相手に相応しいと考えているのだが。
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