夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-

「そなたは殿下のことを気に入っていたな。此度の件、どう思う?」

ローレンスがリアンのことを気に入り、よく二人で出掛けていることを知っていたルヴェルグは、先ほどクローディアと話していたことについて尋ねた。

手鏡で自分の髪や顔をチェックしていたローレンスは、ぱちぱちと目を瞬かせながらルヴェルグを見る。

「それは皇帝の弟に聞いていますか? それとも弟のローレンスに?」

「愛する弟に聞いている」

愛するという単語を聞いてローレンスは光の速さで手鏡を仕舞い、にやけそうになるのを堪えながら「えっへん」と声を出すと、ルヴェルグの前に椅子を運んで座った。皇帝が仕事をする机の前に椅子を置いて座るのは、この先もきっとローレンスくらいだろう。

「正直な話をすると、怖くもあります。僕個人としては殿下のことは好きなんですけどね」

「何故怖いんだ? 真珠くらいしか取り柄のない国だが、国が信仰している宗教の影響か、戦を起こすことはないだろう? 五十年後を考えても平和に付き合える相手だと思うのだが」

その実態はさておき、自称平和主義者であり平和を愛すると謳っている国は、自ら戦を起こすようなことはしない。帝国の国家と親戚関係になるのなら尚更だろう。

ならばローレンスは何を恐れているのだろうか。探るような眼差しでルヴェルグはローレンスを見つめる。
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