夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
予兆
部屋に入ってきたリアンはクローディアを見て、一瞬驚いたように目を丸くさせていたが、すぐに笑みを浮かべた。
「あれ、起きて待ってたんだ」
白いブラウスと黒のスラックス姿で現れたリアンは、お風呂から出たばかりなのか肩にタオルを掛けている。
「だって、今日は…」
「今日は、なに?」
リアンはタオルで髪をわしゃわしゃと拭くと、ドアの近くに置いてある木製のかごの中に放り投げた。
これから何が起きるのかドキドキして仕方がないクローディアと違って、リアンは余裕そうだ。
「今日は、大事な日なんでしょう?」
クローディアは恐る恐る問いかける。それを聞いたリアンはその意味を理解したのか、胸の前で腕を組むと、首を傾げて。
「…結婚記念日だから?」
なんだか楽しそうな声音でそう言うと、ゆっくりとした足取りでクローディアへと歩み寄っていった。
「侍女に言われたの。今夜は大事な日だって。リアンが来たら身を委ねるようにとも…」
あっと思った時にはもう、遅かった。
気づけばクローディアの視界いっぱいにはリアンがいて、緊張で固まっていた身体は、柔らかなベッドの上に押し倒されている。