夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
「…大事な日、ね」
真っ赤になっているクローディアのことを、リアンは面白そうに見下ろしている。思わずクローディアはリアンの胸をぽすりと叩いたが、その弱々しい打撃に効果はなく、それどころか指を絡め取られてしまって、クローディアの体温は上昇してしまう。
「リ、リアン…?」
胸の音が聞こえてしまいそうな距離に、リアンの顔がある。女の子のように長い睫毛に、雪のように白い肌、蒼い瞳。何もかもが綺麗なリアンの吐息がかかり、クローディアの心臓はついに悲鳴を上げた。
ふ、と吐息を感じた瞬間、クローディアは目を瞑った。口づけをされると思ったのだ。
だが、それはいつまで経ってもやって来ることなく、思わず身構えていたクローディアに降ってきたのは、小さな笑い声だった。
「何もしないから、安心して」
その声に、閉じていた瞼を持ち上げると、リアンは優しい眼差しでクローディアのことを見下ろしていた。
「好きでもない男に、抱かれたくないだろうし。…そもそも俺たちは、本当の夫婦じゃないしね」
「だ、抱くって…」
「侍女が言ってたっていうのは、初夜のことでしょ?」