夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
クローディアは納得した。結婚をして夫婦で初めて迎える夜だから、侍女たちはクローディアにこのような格好をさせたのだ。
「…あ……」
リボンを解けば脱げるこの服は、まことの夫婦になるための手助けのようなものだろう。悪夢の中で何度か経験していたクローディアは、男女の営みについては知っているが、もしかしたらこれから起きていたかもしれない事とは、クローディアの知るものとは随分と違うようだ。
悪夢で経験したはじめての夫婦の営みというのは、期待で胸を膨らませていたクローディアの身も心もズタズタに引き裂いたものだった。
大事な侍女の髪を投げつけられ、服は引き裂かれ、嫌だと泣いても口を塞がれ、乱暴に、一方的に行われ。果てには縛りつけられたりなど、そこには優しさも愛も何ひとつなかった。
(──そう…初夜とは、アレと同じことなのね)
きっと、子を作る儀式の初回を“ショヤ”と言うのだろうとクローディアは考えた。何が何なのかきちんと理解せずに、こんな格好をして待っていたクローディアを見て、リアンは揶揄ったのだと思うが。
──もしも、本当の夫婦だったのなら。リアンはあのまま続けていたのだろうか。
ふとそう思った時、思い出したくもないフェルナンドとの夜の記憶が流れ込んできて、クローディアは涙をこぼした。