夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-

洗い立てのような太陽の光が部屋に差し込む。カーテンの隙間から訪れたそれの眩しさで、リアンは目を醒ました。

ゆっくりと体を起こすと、左手に痺れを感じた。その原因を探そうと視線を動かすと、安らかな寝息を立てているクローディアの姿が目に入る。

(……そっか、昨日…)

左手が痺れていたのは、一晩中手を握っていたからだ。どうして繋いでいるのか、どちらからそうしたのかは覚えていないが。

「…う……ん…」

リアンが動いたからか、クローディアが目を開けた。その目はぼんやりと天井を映していたが、次第に意識がはっきりとしてきたのか、隣にいるリアンへと動く。

「…お、おはよう。ディア」

初めて女の子と共に朝を迎えたという状況に気がついたリアンは、挨拶をしたきり黙り込んでしまった。こういう時には何と声を掛ければいいのか分からなかったのだ。

本当の夫婦ではないとはいえ、同じベッドで女の子と眠りにつき、朝を迎えた。そうしたらおはようの後は何と言えばいいのか。

女遊びが好きな人に、知恵を拝借すれば良かったとリアンは後悔しそうになったが、寝起きのクローディアがふにゃりと笑ったのを見て、リアンの頭はまっさらになった。

「…おはよう、リアン」

「………おは、よう」

リアンは咄嗟にクローディアから目を逸らし、メイドを呼ぶ呼び鈴を鳴らし、朝の支度をするよう命じて逃げるように続きの部屋へと入った。

寝起きの女の子を見たら、悪いことをしたような気分になったのだ。そのうえなんだか顔も熱い。

(…熱でも出たのかな、俺)

リアンは冷たい水で何度も顔を洗って着替えた後、外の風に当たるために庭園へと向かった。
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