夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
ローレンスは声を上げて笑った。それはそうだ、負けては兄失格だと幸せそうに言うと、リアンの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「晴れて君も僕の家族となったのだから、そんな寂しいことを言わないでくれたまえ」
家族という言葉に、リアンの鼓動が跳ねる。父も母も兄もいたが、それらしい会話をしたり共に過ごしたことがほとんどなかったリアンには、家族とはどういうものなのかが分からない。
だからこうしてローレンスに頭を撫でられると、どんな反応をすればいいのか分からないし、湧きあがるくすぐったいような、照れ臭いような気持ちのやり場も分からない。
だが、優しくに微笑むローレンスを見ていると、こっちまで幸せな気持ちになる。そんな風に過ごしていると、家族とはきっとこういうものなのだろうと思うことはできた。
「──ローレンス。ここに居たんだね」
そこへ、艶のある柔らかな声が落ちる。声がした方を向くと、皇宮の方角からエレノスが歩いて来ていた。その後ろには正装姿のフェルナンドもいる。
「おはよう、ローレンス。ヴァレリアン殿下も」
「やあ兄上よ。フェルナンド殿下もご機嫌麗しゅう」
「おはようございます。エレノス閣下」
リアンは挨拶を返した後、エレノスの少し後ろで気味が悪いくらいにニッコリと微笑んでいるフェルナンドを睨みつけた。何故ここにフェルナンドがいるのか。