夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-

帝国の第三皇子のローレンスは、フェルナンドのことを好ましく思っていなかった。

フェルナンドは王家の血を色濃く受け継いだ容姿をしている、王国の正統な血筋の王太子だ。穏やかで弟想いで、家族と国を愛しているという。

だが、それは王国の民たちの評価だ。第二王子のヴァレリアンを知り、共に過ごし、語らい──その人柄に触れたローレンスは、人々が語るフェルナンドの人物像について違和感を持ち始めていた。

そんなにも完璧な人間で、誰もが愛してやまない未来の王ならば、なぜリアンは毛嫌いしているのだろうか。兄の愛を拒む理由は何なのだろうか。
ローレンスは今日こそそれが知りたいのだ。


エレノス達と別れ、南宮へと足を踏み入れたローレンスは、使用人達に自分が来たことをクローディアには伏せるよう命じると、リアンの私室へと向かった。

ここは皇族の一員となったヴァレリアン王子のために、宮の中を改築して用意させた部屋だ。

以前は客間が並んでいたフロアだったが、北側の三部屋の壁を取り壊して一つの部屋にすると、リアンが好みそうな調度品を集め、シンプルながら美しい夫君の部屋となった。

無論皇宮内にも執務室を用意させたが、使うのはもう少し先になるだろう。


「──ヴァレリアン殿下、失礼させてもらうよ」


リアンの部屋に到着したローレンスは、しばらくの間人を近づかせないよう使用人に命じると、扉越しにひと声掛けて部屋の中へと入った。
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