夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
呪縛
エレノスが目覚めた後、倒れてから数日の間、ずっと付き添っていたクローディアは、エレノスが眠りについたのを見届けるとリアンと合流するために椅子から立ち上がった。
何か思い詰めたような様子だったエレノスを置いていくのは気がかりだったが、今は身体を休めて欲しい。それに、ひとりになって考えたいこともあるだろう。そう自分に言い聞かせて部屋を出ると、そこにはリアンが立っていた。
「エレノス様の様子は?」
「倒れた時よりも顔色はずっと良いわ。…話もできたし」
「そう…。早く良くなるといいね」
クローディアは小さく頷いて、歩き出したリアンの後ろをついて行った。
窓辺から差し込む夕陽が、リアンの金色の髪を照らしている。ルヴェルグよりも少し薄い色合いのそれは、出逢った頃は黒いフードの下に隠されていたが、クローディアと出逢ってからはありのままの姿を陽の下で見ることができている。
じっとリアンの髪に見入っていたら、ふいにリアンが足を止めた。ぼんやりと歩いていたクローディアは、無論リアンの背中に頭から突進してしまった。
「急にどうしたの、リアン」
乱れた前髪を直しながら顔を上げると、リアンは無言で前を見据えていた。
「リアン?」
どこか具合でも悪いのかと尋ねようと、クローディアはリアンの前に回り込もうとしたが、リアンは何かを隠すようにクローディアの前に立ちふさがった。
「これはこれは、皇女殿下もご一緒でしたか。ご機嫌は如何ですか?」
リアンの向こうから、久しく聞いてなかった声が耳に届いた。