夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
キイ、とガラス張りの大きな窓が開かれる。そこから軽々と窓枠を飛び越えて現れたのはローレンスで、手に持っていた剣をフェルナンドの喉元に突きつけた。
「いくら妹の夫の兄上といえど、ここは我が国の城で、貴方は客人だ。王太子という立場の貴方が、それを知らないはずがないと僕は思うのだがね」
「剣をお納めください。殿下は勘違いをされています」
フェルナンドは動じるどころか優美な微笑みを浮かべると、ゆったりとした動作で立ち上がり、ローレンスに深く敬礼をした。
「誤解をさせてしまい、申し訳ありません。私はよろめいた皇女殿下をお助けしただけだったのです。それを、偶然通りかかったヴァレリアンに誤解をされっ…」
うう、とフェルナンドは悲しげに顔を歪めると、縋り付くような眼差しをローレンスに向けながら崩れ落ちた。ローレンスは剣を少し下げると、眉を顰める。
「……本当なのかね? ディア」
「それは……」
クローディアは口を噤んだ。それは全くの嘘で、リアン共々襲われていたも同然だったと言いたいが、そう伝えたら──国と国の問題に発展してしまうのではないかと思ったのだ。
幸い、クローディアもリアンも怪我をしていない。真実は秘めておくか、後々ローレンスだけにひっそりと打ち明け、口外しないよう頼むのが良いだろうと。
クローディアは隣にいるリアンを見つめた。一番の被害者は自分ではなくリアンだからだ。酷いことを言われ、殴られそうになったのだから。
「いくら妹の夫の兄上といえど、ここは我が国の城で、貴方は客人だ。王太子という立場の貴方が、それを知らないはずがないと僕は思うのだがね」
「剣をお納めください。殿下は勘違いをされています」
フェルナンドは動じるどころか優美な微笑みを浮かべると、ゆったりとした動作で立ち上がり、ローレンスに深く敬礼をした。
「誤解をさせてしまい、申し訳ありません。私はよろめいた皇女殿下をお助けしただけだったのです。それを、偶然通りかかったヴァレリアンに誤解をされっ…」
うう、とフェルナンドは悲しげに顔を歪めると、縋り付くような眼差しをローレンスに向けながら崩れ落ちた。ローレンスは剣を少し下げると、眉を顰める。
「……本当なのかね? ディア」
「それは……」
クローディアは口を噤んだ。それは全くの嘘で、リアン共々襲われていたも同然だったと言いたいが、そう伝えたら──国と国の問題に発展してしまうのではないかと思ったのだ。
幸い、クローディアもリアンも怪我をしていない。真実は秘めておくか、後々ローレンスだけにひっそりと打ち明け、口外しないよう頼むのが良いだろうと。
クローディアは隣にいるリアンを見つめた。一番の被害者は自分ではなくリアンだからだ。酷いことを言われ、殴られそうになったのだから。