夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-

帝国歴一〇〇〇年、春の終わり。

オルヴィシアラ王国の王太子・フェルナンドに嫁いだ皇女クローディアは、王国の王太子妃となりアウストリアの籍を抜けた。


「うわああ! 見てください皇女様!オルヴィシアラって、水が凄く綺麗ですよっ!」

黒い婚礼衣装に身を包んだクローディアは、侍女であるアンナとベルンハルトの母・レリアナ夫人と共にオルヴィシアラに到着した。

アンナは生涯付いていくと言って聞かなかったので共に来たが、レリアナ夫人は母親の代役として宣誓式に参列する為に来てくれていた。

「アンナったら、クローディア様はもう皇女殿下ではなく王太子妃様となられたのよ。しっかりなさい」

宣誓式とは、神の前で誓いをする儀式だそうだ。オルヴィシアラ王国には、全国民が信仰している神がいるらしい。

妻となる人は母親とともに、夫となる人は父親とともに歩くという決まりがあるので、母を亡くしていたクローディアは乳母だったレリアナに頼んで来てもらっていたのだ。

「はい、しっかりします!何せあたしはクローディア様の一の!侍女ですから!」

「あたしではなく、わたくし、ですよ。全くもう」

レリアナはやれやれと言ったふうに笑うと、クローディアの身嗜みを今一度チェックしていった。

ラインハルトが直々にオルヴィシアラを訪れ、布に糸に装飾する宝石に至るまで自ら選び作られた黒いドレスは、皇女の美しさをよく引き立てていた。
< 29 / 223 >

この作品をシェア

pagetop