夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-

「……まあ、あの人ったら」

クローディアの花嫁姿を見てあることに気づいたレリアナは、今頃仏頂面で仕事をしているであろうラインハルトの姿を想像して微笑んだ。


ラインハルトは寡黙で自分のことを中々語らないうえ、感情を表に出すことも少なかったので、クローディアからしたら滅多に話さない伯父と姪という関係だっただろうが、ラインハルトにとってはそれだけではないことをレリアナはよく知っていた。

ソフィアがクローディアを産んで亡くなった日は静かに涙を流し、ひとり遺された皇女を優しく抱き上げ、涙ながらに頬擦りしていたのを見ていたからだ。

(……これは、気づかないわね。ふふっ)

レリアナは小首を傾げているクローディアの頬をそっと撫でてにっこりと微笑んだ。


ラインハルトが贈った衣装は、遠目から見るとオルシェ公爵家の象徴である花・アルメリアが浮かんで見える仕掛けがされており、留め具にはオルシェ家の紋が一つ一つ丁寧に彫られていた。
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