夜明けの花 -死に戻り皇女と禁色の王子-
それから、フェルナンドは夜になると毎日のようにクローディアの元を訪れては、何の感情もなく抱いていった。
アンナの代わりに王太子妃の世話を命じられた侍女は、日に日に痩せ細っていくクローディアを見ては泣いていた。
どうして王太子妃がこのような仕打ちを受けないといけないのか。これが帝国に伝わったら王国はどのような目に遭うのか、フェルナンドは考えたりしないのだろうか。
そう思ってはいても、口に出すことは叶わない。そうしたら最後、次は自分もアンナのような目に遭ってしまうかもしれない。
クローディアを憐れみ同情はしても、我が身可愛さに行動を起こすことができなかった侍女は、その罪を償うかのように献身的にクローディアの身の回りの世話をしていった。
それから一年くらいが経った頃だろうか。
オルヴィシアラ王国に嫁いでから一年と半分が経った頃、王太子妃クローディアは男児を出産した。帝国の血を引く王子の誕生に、王国中が喜びに満ちていた。
ただ一人、クローディアを除いて。
「……王子殿下は、アルメリア様と名付けられたそうです」
王国の世継ぎが誕生してすぐに、フェルナンドは王位を継承した。孫の誕生に歓喜したフェルナンドの両親が、二つ返事で譲り渡したそうだ。
それを侍女から聞いたクローディアは、今は寂れた離宮に移されていた。元より身体が弱かったせいか、産後の肥立ちが悪かったのだ。
クローディアは今日もベッドの上で寝たきりだったが、王子の名を付けたのが兄ルヴェルグだというのを侍女から聞いて、静かに涙を流していた。
フェルナンドの即位に伴い、王妃となったクローディアだが、まだ我が子の顔を見たことがないどころか、抱くことすら叶っていなかったのだ。