夜明けの花
王国の使用人を脅し、強制的にクローディアの元へ案内させたローレンスは、久しぶりに会う妹の姿を見て絶句した。
美貌の皇女と謳われていたクローディアだが、目の前で横たわるクローディアは痩せ細り、唇は紫色で、ぜえぜえと苦しそうに息をしていた。
「………ディアっ!」
クローディアは重い瞼をこじ開けた。その声が兄のローレンスのものであることは気づいたが、視界が朧げでどのような表情をしているのかまでは分からなかった。
「ああ、我が妹クローディアっ…!なぜこんな目にっ…!?」
ローレンスはクローディアを掻き抱いた。ろくに食事も与えてもらえなかったのかと思うくらいに痩せてしまった妹をぎゅっと抱きしめると、横向きにベッドから抱き上げる。
「帰ろう、クローディア。こんな国に居ては駄目だ。アルメリア王子と共にアウストリアに戻ろう。陛下もエレノスも皆君を歓迎する」
他国に嫁いだ皇族が離縁をして戻ることはあってはならないし、そのような事例は一度もない。だが、そんなことを言ってられる状況ではなかった。
「…いいえ、それは…なり、ませ…」
言葉の途中でクローディアは咳をした。それは中々止まらないどころか、真っ赤な鮮血まで溢れさせる。