夜明けの花
「──陛下、王子アルメリア様でございます」
悲しみに暮れるクローディアの兄たちの元へ、レリアナ夫人が遺されたアルメリアを連れて来た。
それを受け取り抱き上げたエレノスは、愛する妹に何もかもがそっくりな甥を見てやっと涙を流す。
「…ディアにそっくりだ」
ああ、とルヴェルグは頷いて、エレノスの肩を抱いた。
「あんな国には置いてゆけないので、勝手に連れ帰りましたこと、お許しください」
「よくやった。ローレンス」
ルヴェルグはゆっくりと玉座に戻ると、凛とした顔で告げる。
「……鐘を鳴らせ。民に知らせるのだ。クローディアが天に召されたことを」
一同は「御意」と膝をつき、頭を垂れた。
──帝国歴一〇〇二年。
クローディア=オルシェ=アウストリア──絶世の美女として世界中に名を馳せていた帝国の皇女は、十九歳という若さでこの世を去ったのだった。