【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
一章 プロローグ

愛のない結婚




「花純(かすみ)……もっと顔を見せろ」

「ん……泰裕(やすひろ)、さん……」

 私をキングサイズのベッドの上から見下ろすのは、私の夫になった人。
 彼は本郷(ほんごう)泰裕(やすひろ)さん。彼は三ヶ月前、私の夫になった。

 私と泰裕さんは、いわゆる政略結婚というヤツだ。 私が彼と結婚すれば、父親の抱えている借金を全額返済してくれると、そう約束してくれたからだ。
 だから私は、泰裕さんと結婚することを決めた。 借金返済の地獄から逃れたくて。

「あっ……っ」

 泰裕さんと私の結婚には、そもそも愛がない。ただ政略結婚で結婚した妻と夫という関係だ。

「っ……花純……」

「やす、ひろ、さん……んっ」

 夫婦になった私たちだけど、愛のない行為をしている。 彼にとってセックスなんて、ただの業務でしかない。
 妻の私を抱くことは、彼にとってはただの業務。

「あっあっ……っ」

 泰裕さんとセックスしている時の私は、心が空っぽになる。
 愛なんてないのにセックスするのは、虚しすぎるからだ。

「花純、後ろからするぞ」

 体勢を変えて再び私を抱く泰裕さんの考えていることは、何も分からない。
 名前は呼んでくれるけど、その心の中は何も分からない。
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