【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
「なぜだ?」
そう聞いてくる泰裕さんに、私は「だって泰裕さん、お仕事で疲れてますよね……?」と問いかけてみる。
「別に大丈夫だ。それに一人で買い物なんて、大変だろ?」
そう聞かれたけど、私は「無理しなくて、大丈夫ですから」と再び伝える。
「言っておくが、無理はしていない。 妻の買い物に夫が付き合うのは、夫の役目だろ」
そんなに優しい言葉をかけてくれるなんて、思ってもなかった。
「……ありがとう、ございます」
「お前は俺の妻なんだから、もっと俺を頼れ。一人で何でもやろうとしなくていい」
泰裕さんのそんな優しい言葉に、私は「はい。ありがとうございます」と返事をした。
「車は俺が出してやる」
「ありがとう……ございます」
泰裕さんは優しいのかどうか、分からない。多分優しい人なんだと思う。
でもこの人は冷酷な人だ。余計なことは一切言わない。 だけど、たまにこうして見せる優しさが、胸に染みるのはなぜだろう。
「俺、もう寝るけど」
泰裕さんは、スマホを充電器に差し込んでいる。
「あの、私ももう寝ます」
「そうか。 おやすみ」
「……おやすみなさい」
その日の夜も、私たちはいつ通りに眠りについた。