【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。


 泰裕さんは私の夫だから、優しい泰裕さんを見たい。

「え?」

「泰裕さんは、私に優しくしてくれます。……でもそれは、妻だからですよね?」

 もし私が妻でなければ、彼はきっと私に優しくなんてしてくれない。

「自惚れるな。……優しくしてるつもりはない」

「……そうですか」

 彼は私に対して、そんな冷たい言葉を向ける。

「自惚れるな……か」

 小さく呟いた私の気持ちなんて、きっと彼には伝わっていないだろう。 
 妻だからこそ、優しくしてほしいなんて……。私は自惚れてるのかな?
 愛されない代わりにそれだけを望みたいなんて……わがままなのかな?

 こんなの、夫婦なんて言えるのかな……。
 手も繋がない、キスもしない。でも身体は重ね合う。 これが夫婦だって……言えるのかな?

「……花純」

「はい……?」

 泰裕さんに視線を向けると、泰裕さんは「来週末、キャンプに行こう」と言い出した。

「え、キャンプ……?」

「さっきキャンプ用品買ったし、友人もキャンプが好きで、一緒に行く約束をしてる。 だからお前も一緒に来いよ」

「え……でも」

 私なんかが一緒に行ってもいいのかな……?

「友人にも、お前を紹介しろと言われてるからな」
< 17 / 44 >

この作品をシェア

pagetop