【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
「あ……そうなんですか」
友人に、私を紹介してと言われてるんだ……。
「一緒に行ってくれるだろ?」
「……はい。泰裕さんが、良ければ」
泰裕さんは「そうか。良かった」とハンドルを握り直した。
私を……妻として紹介してくれるのだろうけど、それすらこんなに虚しいだなんて……。
でも私は、彼に恩返ししないとならないから、何も言い返せない。
「友人とは現地に待ち合わせにしてるから、現地で落ち合う感じにしてる」
「分かりました」
「……何を不安になってるのか分からないが、ちゃんと妻として紹介する。安心しろ」
私は心の中まで見透かされているのではないか、そう思うくらいにビクッとした。
「……あの、泰裕さん」
「花純、お前は正真正銘俺の妻だ。籍入れたんだから、当たり前だろ」
「……はい」
そんな私に、泰裕さんは「そんなに不安にならなくてもいい」と告げてくる。
「はい。分かりました」
不安にならなくていいと彼は言うけど、私は不安でしかない。 妻として迎え入れてくれたけど、この結婚には愛なんてない。
それに……好きにならなくていい。好きになってもらうことも期待するなって、言われているのだから。