【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
契約結婚……。私たちは契約結婚ではないから、ある意味政略結婚ではあるけど。
ただ、好きにならなくてもいいということは言われてるから……ある意味それは、契約みたいなものだと思う。
好きになることも期待するなって、私はそう言われてる。
だから私は、彼に好きになってもらうこともないし、好きにもなれない。
本当に私たちは、愛のない夫婦だ。 こんなの……夫婦じゃないよね。
「……花純」
「は、はい……?」
スマホから顔を上げると、彼は「もうすぐ着くから」と言ってくる。
「分かりました」
「お前、キャンプは初めてか?」
「はい。初めてです」
「そうか。 楽しめるといいな」
私は泰裕さんのその言葉に相槌を打ち、「はい。楽しみです」と答えた。
夫婦二人でのキャンプ……ってことではないけど、二人で初めて過ごす屋外での生活。
ドキドキもしてるし、楽しみな部分もある。
「着いたぞ」
キャンプ場へと到着した私たちは、車を降りてキャンプ用品を車から降ろしていく。
「おい、泰裕!」
車から荷物を降ろしていると、泰裕さんを呼ぶ声が聞こえてくる。
「おう!悠一(ゆういち)!」
その友人は、悠一さんと言う人らしい。