【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
それ以外にキスをしてもらえることはほとんどない。だからセックスの時だけは、泰裕さんにキスをしてもらえる。
セックスの時だけ、キスをしてもらえるなんて……本当に情けない。愛されてないということが、よく伝わってくる。
「なんだ、まだ寝てないのか」
布団に潜ったままの私に、泰裕さんは冷たくそう言い放つ。
「……すみません」
「なんだ、謝ることはない」
「……はい」
借金返済をしてもらった以上、私は離婚することなど望んではいけない。
……そんなこと、絶対に許されない。
「花純」
名前を呼ばれ返事をすると、泰裕さんは「明日の夕飯は、会食があるからいらない」と言われる。
「……分かりました」
泰裕さんは常に忙しい人だから、家で夕飯を食べることは少ない。会議や出張、会食など、予定が詰まっている。
「明日朝、早いんだ。もう寝るよ」
「はい。……おやすみなさい」
「おやすみ」
すぐベッド脇のライトを消して眠りにつく泰裕さんの姿を確認した後、私もすぐ眠りについた。
泰裕さん……私は、あなたのなんなのですか?
妻だと、本当に思ってくれてますか?
私は愛されたいと望むことすら、許されない存在ーーー。