【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。


「アイツの前だから、ああ言っただけだから」

「……そう、ですよね」

 私は何を期待していたんだろう。何を……。
 そう思うと悲しくなって、無性に泣きたくなる。

「……花純?」

 何も言わない私を不思議がり、泰裕さんは私の方を振り向く。

「おい、どうした……?」

「……なんでも、ありません」

 私は涙を隠すように、泰裕さんの元から走り出す。

「え、おい!花純!?」

「すみません……。一人にして、ください」

「花純……」 

 私はそう言い残すと、そのまま一人で歩き出した。

「私……とことん、愛されてないんだ」

 そう思うと悲しくて悲しくて、仕方なかった。
 キャンプ場から少し離れた場所まで歩いた私は、知らない間にここまで来てしまったのかと思った。

「ここ……どこ?」

 私、こんな所まで歩いてきてしまったんだ……。どこだか分からない不安が、私を襲う。

「泰裕さん……どこ?」
  
 泰裕さん……私、ここどこだか分からないよ。

「泰裕さん……!」

 名前を呼んでみても、返事などある訳がない。

「どうしよう……」

 私、迷子になっちゃったみたい……。
 こんな歳になって迷子とか、恥ずかしい……。
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