【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。
「私は……あなたに愛されない。私も、あなたを愛さない。……だから、余計なことはしないでください」
私はもう、この気持ちを知っている。 私は……泰裕さんのことが好きなんだ。
だからこんなに苦しくなる。だからこんなにも、惨めになる。
「……お願いだから、私を手放して……っ」
それをやってもらえたら、私は何もいらない。何も望まない。
「もう……苦しいのはイヤなんです……」
どうしてこんなに涙が溢れるんだろう。どうしてこんなに、胸が痛いんだろう。
私は……どうしてしまったのだろう。
「……今更手放せる訳がないだろ」
「どうして……? どうして……」
「お前のことを守れるのは、俺だけだろ?」
泰裕さんの言葉に、私は何も言えなかった。
「俺はお前の夫だ。俺たちは夫婦なんだ。 夫婦になったんだから、簡単に手放せる訳がないだろ?」
「……だったら、離婚してください」
そう呟いた私に、泰裕さんは「離婚……?」と顔をしかめる。
「私と……離婚してください。 そしたら、私を守らなくていいですし、愛する必要だってない」
「なに言ってんだよ……。離婚なんか、出来る訳ないだろ?」
……そう言うと思った。