【完結】借金返済のために結婚したのに、いつの間にか愛で包まれていました。


「私は……あなたに愛されない。私も、あなたを愛さない。……だから、余計なことはしないでください」
 
 私はもう、この気持ちを知っている。 私は……泰裕さんのことが好きなんだ。
 だからこんなに苦しくなる。だからこんなにも、惨めになる。

「……お願いだから、私を手放して……っ」

 それをやってもらえたら、私は何もいらない。何も望まない。

「もう……苦しいのはイヤなんです……」

 どうしてこんなに涙が溢れるんだろう。どうしてこんなに、胸が痛いんだろう。
 私は……どうしてしまったのだろう。

「……今更手放せる訳がないだろ」

「どうして……? どうして……」

「お前のことを守れるのは、俺だけだろ?」

 泰裕さんの言葉に、私は何も言えなかった。

「俺はお前の夫だ。俺たちは夫婦なんだ。 夫婦になったんだから、簡単に手放せる訳がないだろ?」

「……だったら、離婚してください」

 そう呟いた私に、泰裕さんは「離婚……?」と顔をしかめる。

「私と……離婚してください。 そしたら、私を守らなくていいですし、愛する必要だってない」

「なに言ってんだよ……。離婚なんか、出来る訳ないだろ?」

 ……そう言うと思った。
< 33 / 44 >

この作品をシェア

pagetop