俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
***

意気消沈してタクシーでマンションに帰ってきた。

騒々しい心臓はいまだに落ち着くことを知らない。

あの女性はいったい誰だったのか。

まさか。

まさかの!!

愛人ってやつなの?

いや、旭さんに限ってそんなことはしないだろうけれど、明らかに親しげだった。

ふたりはあのあとどこに向かったのだろう。

こんなに胸がモヤモヤするならば、あの場に出て行けばよかった。

今更ながらに後悔しても遅いのだけれども。

ふと携帯に目をやる。

すると、旭さんから〝今、日本に着いた。早く会いたい〟とLINEが入っていることに気が付いた。

ええ、帰国したことは知っていますとも。

この目で見ましたから。

早く会いたいって……。

それはリップサービスなの?

さっき知らない女性との手を取って歩いてましたけどね?

沸々と湧き上がってくるやり場のない怒り。

ああ、やだ……。

嫉妬心にかられる醜い自分が嫌になる。

脳裏に焼き付いたさきほどの光景が頭から離れない。

こんな状態で旭さんに会えそうにない。

あふれ出す涙を手で拭う。

できれば、旭さんのことを信じたい。

ひとまず気持ちを落ち着かせて冷静にならなくちゃ。
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