俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
てっきり今から帰るという連絡の電話だと思っていた私にとって、伝えられたことはショックすぎて心がざわめきだす。

「……そう、ですか」

必死に抑え込んでいた不安と悲しみが込み上げてきて、声が震えた。

『夏香? どうかしたのか?』

旭さんの心配そうな声が耳に届く。

やっぱり私には平静を装うことが難しいみたいだ。

このまま旭さんと電話を続けたら泣いてしまいそう。

「……いえ、なんでもないです。お仕事頑張ってくださいね」

そう言って早々に電話を切り上げた。

今からトラブル先に行くって言ってたけど、もしかしたら……。

嫌な妄想が頭をよぎり、それをかき消すように頭を横に振る。

旭さんが私を裏切るわけない。

あの彼女と一緒にいるわけ……ないよね?

誰か、この胸の不安を取り除いてほしい。

……旭さん、早く帰ってきて。

お願いだから、早く顔を見せて。
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