俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～
眠れぬ夜とはこんなにも果てしなく長く感じるものなのか。

気づけば夜が明けていた。気持ちがぐちゃぐちゃでなにも手につきそうにない。今日は仕事が休みでよかったと心から思う。

旭さんは結局、昨晩帰って来なかった。

その事実が余計に不安を大きくし、よからぬ推測が頭をよぎる。

気づけば、溜め息ばかり出る。

ひとまず着替えて顔を洗おう。

少しでも気持ちを切り替えたくて身支度を整えることにした。

＊＊＊

「ただいま」

私が身支度をひと通り整えた頃、旭さんは帰ってきた。

その顔には疲れが滲む。

「おかえりなさい……」

私、ちゃんと笑えているだろうか。

必死に口角を上げる。

「仕事の方は大丈夫でしたか？」

「ああ。明後日納品のアイテムの一部に不備が発覚して、宝来たちと工場に出向いてあれこれ作業をしていたら朝になってた。でも、なんとか納品は間に合いそうだ」

ネクタイを緩めながら旭さんがほっとした表情を浮かべる。
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