俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～
「無事に解決してよかったです」

「心配してくれてありがとな」

やわらかく微笑む彼の瞳を直視できないのは、やましい気持ちがあるからだ。

私は旭さんを心配していたんじゃない。

むしろ疑ってしまっていたんだ。

だから遠回しに探りをいれただけ。

だから、ありがとうだなんて言わないで。

私はそんなに心が清らかじゃない。

今だって私の胸の内にはこんなにも負の感情があふれているのだから。

「やっと会えた」

旭さんが私の腕を引いて胸に引き寄せる。

十日ぶりに包まれた彼の温もりは、苦しくて切なくて。

泣いてしまいそうだ。

「夏香……」

いつもと同じように声色は甘くやわらかい。

旭さんの綺麗な顔が間近に迫る。

キスされるのだと思った。

ふと、頭に浮かんだ昨日の光景。

あの女性に触れた手で、私に触れないでほしい。

「お、お腹空いてませんか？」

とっさに顔を背け旭さんから離れてキッチンに向かい出した。
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