俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
***

「ここのモンブランすごく美味しいんですよ。夏香さんにも食べてほしかったなぁ」

彼女が穏やかな笑みを浮かべながら、モンブランをフォークで口に運ぶ。

私はとてもじゃないが、なにかを食べる気にはなれなくてホットの紅茶のみを頼み、ティーカップから立ち上る湯気をぼんやりと見つめる。

あれから莉緒さんが行きつけだというカフェの個室に移動した。ナチュラルテイストの温かみのあるおしゃれな雰囲気のお店だが、それを楽しむ余裕はない。

「夏香さん、あきらかに私の顔を知っている様子でしたけど、どこで会ったことありましたっけ?」

ふいに彼女から質問が飛び、宙で瞳が絡まる。

「……先日、空港で……あなたと旭さんが一緒にいるところを偶然見たんです」

嘘を吐く必要はないだろう。

彼女の反応を確かめるように様子を窺いながら、ありのまま真実を口にした。
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