俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～

『なんで？　どうして……』

やり場のない怒りと悲しみで声が震え、とめどなく涙があふれた。

希望なんていうものは抱けば抱くほど絶望という黒い闇は大きくなり、心の傷は深いものになることを私が知ったのは、それからまもなくのことだった。

病院に入院している父が、検査の結果末期の胃がんであることが判明したと母親に聞かされたのだ。もう手の施しようがないと言われた。

思えば、ずっと胃の調子が悪いと言っていた。そのときに病院に行っていたら、未来は変わっていたかもしれない。

なんて後悔しても現実はなにも変わらない。

散歩に行くと言って家を出てどのくらいそうしていたか分からない。

母は弟と家にいて、そんななかで私が泣き出してしまったら、母にも弟にも心配をかける。それが嫌で気持ちが落ち着くまで近くの公園にいることにしたのだった。

その日はバイトがなくて本当によかったと思った。

気持ちが落ちてまともに仕事をできる気がしないし、気を抜けばすぐに視界が滲んでくる。