俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
***

「終わった~!!」

時刻は二十一時を回っていた。長瀬課長に頼まれた商談用の資料を作り終え、最終チェックをして席から立ち上がる。

シーンと静まり返ったオフィス。周りには誰もいない。

この時間にもなると、社内に残っているのは数人しかいないだろう。

私もそろそろ帰ろうかな。

部屋の電気を消してドアに向かい廊下に出た。そして、エレベーターに乗ろうと歩き出したそのときだった。

「こんな時間まで残業? お疲れ様」

横から男性の声が届いてそちらを向いた。

「あさ……瀬名課長、お疲れ様です」

思わず旭さんなんて言いそうになってしまった。

声をかけてきたのは旭さんだった。向けられた視線に耐えられなくてうつむく。

どうやら彼もこの時間まで残業していたらしいが、ここで鉢合わせをするなんて予想外だった。

思わぬ形で彼にあのときのお礼を言うチャンスが訪れたけれど、極度の緊張から言葉を絞り出せずにいる。
< 18 / 150 >

この作品をシェア

pagetop