俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
***

「まさかここで再会するなんてな」

「……私もびっくりでした。それに瀬名課長が、社長の息子さんだって知ってさらに驚きました」

「瀬名課長って……その堅苦しい呼び方やめろよ。旭でいい」

「そんなことを言われても、それはそれで立場上困るんですけど」

「今はもう業務外だから、いいだろ?」

あれからエレベーターに乗らず、自販機で買ったコーヒーをお供にフリースペースにある椅子に座り、旭さんと他愛もない話をしていた。

まさかこんな展開になるなんて夢にも思わなかった。

「まぁ元気そうでよかったよ」

「……まあなんとかやってます。あの……」

「なんだよ?」

とっさにお礼を言うならば今しかないと思った。

「あのときは本当にありがとうございました」

やっとあのときのお礼が言えたその瞬間、胸のもやもやが消えると同時に肩の荷がスッと下りた気がした。

「そんなことかよ。てか、なんの前触れもなくいきなりいなくなるし、心配したんだからな」

旭さんの方は納得がいっていない様子。

てか、そんなに睨まなくてもよくないですか?

なんて言える立場ではないけど。
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