俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「それは本当にすみませんでした! いろいろあって、あのあとすぐに長野に引っ越したんです」

とにかく謝ることと、やんわりと事情を説明することしか私にはできない。

「長野に? そうだったのか」

自分自身を納得させるように、旭さんが首を縦に何度も振る。

「はい。瀬名課長の連絡先も知らなかったので、あのときお借りしたパーカーも返せずじまいになってしまって……あの今更ですが、なにかお礼をさせていただければと……」

「お礼、か」

ニヤリと笑う旭さんと目が合った。

「って言っても! 常識の範囲内で、できることとできないことがありますけど」

そこはきちんと伝えておかなくては。

旭さんは思考がぶっ飛んでいるから、私の予想のはるか上を超える要求をしてくる可能性も否定できないもの。

「じゃあまずは……」

じゃあまずは……って、ひとつで済ませる気はないってこと?

「夏香の連絡先教えて」

「え? 私の連絡先? そんなのを知ってどうするんですか?」

「一緒に食事に行く」

「えっと、それはちょっと……」

連絡先やら、食事やら……そんな話になるとは思ってもいなかった。
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