俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる～契約結婚だと思っていたのは私だけですか？～

できれば丁重にお断りしたいところだ。

旭さんと個人的にご飯を食べに行ってそれを会社の女子社員に見られたりでもしたら……かなり厄介なことになるのが目に見える。

「食事はその……ご遠慮させていただきたいかと」

「なんでだよ？」

旭さんが眉を顰める。

「ご自分の立場を分かってますか？　社内中の女子があなたに憧れ、お近づきになりたいと思ってるんですよ」

「へぇー。それで？」

まったく興味がないと言わんばかりの気のない返答に私は戸惑う。

「一平社員の私が瀬名課長と食事に行くところを誰かに見られたら……私、この会社で生きていけませんから」

借金の返済と弟の学費に。

私は今、仕事を辞めるわけにはいかないのだ。

とにかく会社では平穏に過ごしたい。

「じゃあ曖昧な関係じゃなきゃいいってことだな？」

「あの、言ってる意味が分からないんですが」

「夏香が俺の彼女、もしくは婚約者。あ、妻ならだれも文句を言わねぇよな」

ダメだ。話にならない。

やはりこの人は今も変わらず、ぶっ飛んでる。