俺様御曹司はドン底OLを娶り愛でる~契約結婚だと思っていたのは私だけですか?~
「とにかくそういう冗談は抜きにして、こちらでお礼を考えさせていただき……」

ブーブーブー。

鞄の中の携帯が震えた。

こんな時間に誰だろう。

なかなか鳴りやまないバイブ音。

「出たら?」

「すみません。ちょっと失礼します」

旭さんに促され、彼から少し離れた場所で電話に出ることにした。

「もしもし?」

『姉ちゃん俺だけど……』

電話の相手は弟の(はやて)だった。

その声は心なしか震えているように思える。

「なんかあったの?」

妙な胸騒ぎを感じ颯に尋ねた。

『母さん今日、夜勤に出てたんだけど、その職場から電話が来て。母さん、仕事中に倒れて救急車で運ばれたって……今、俺、病院に来てる』

嘘でしょう?

そんなこと……。

一瞬、思考が停止した。
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